基本概要
請求人(一審第三者、二審控訴人、再審請求人):広州蒙娜麗莎建材有限公司(以下、「建材公司」という)、住所:広東省広州市。
請求人(一審第三者、二審控訴人、再審請求人):広州蒙娜麗莎潔具有限公司(以下、「潔具公司」という)、住所:広東省広州市。
その他当事者(一審原告、二審被控訴人、再審被請求人):蒙娜麗莎集団股份有限公司(以下、「蒙娜麗莎公司」という)、住所:広東省仏山市。
その他当事者(一審被告、二審控訴人):国家知識産権局、住所:北京市。
本件係争商標は、第4356344号商標「M MONALISAおよび図形」であり、広東蒙娜麗莎新型材料集団有限公司(以下、「新型材料公司」という。本件二審の期間中、「蒙娜麗莎公司」と改名)が2004年11月10日に登録出願し、2008年9月14日に、第11類「ランプ、調理器具、圧力鍋(電気加圧調理器)、洗面所(水洗便器)、腰掛便器」などを指定商品として、登録が許可された。
本件の引用商標は、第1558842号商標「蒙娜麗莎Mona Lisa」であり、広州現代康体設備有限公司が1999年12月28日に登録出願し、2001年4月21日に、第11類「蒸気浴設備、サウナ設備、浴室装置」などを指定商品として、登録が許可された。2012年4月18日に建材公司と潔具公司に譲渡された。
第1476867号商標「M MONALISA蒙娜麗莎および図形」は、南海市樵東陶磁有限公司が1999年7月12日に登録出願し、2000年11月21日に、第19類「非金属床タイル、タイル、建築用非金属壁タイル、建築用パネルタイル」などを指定商品として登録が許可され、2011年6月28日に登録者は新型材料公司に変更された。
2012年3月30日、建材公司、潔具公司は係争商標に対して旧国家工商行政管理総局商標評審委員会に紛争解決を申請し、係争商標と引用商標、第3541267号商標「monalisaおよび図形」が類似商品において類似商標を構成することを理由に、係争商標の取消しを申し立てた。2013年11月25日、商標評審委員会は商評字[2013]第116692号「第4356344号商標「M MONALISAおよび図形」に関する紛争裁定書」(以下、「係争裁定」という)を発行し、次のように判示した。係争商標の指定商品である「調理器具、圧力鍋(電気加圧調理器)、洗面所(水洗便器)、腰掛便器」と引用商標の指定商品は類似を構成しており、係争商標と引用商標は、類似商品に使用される類似商標を構成し、2001年に改正された《中華人民共和国商標法》(以下、「商標法」という)第28条の規定に違反しており、指定商品「調理器具、圧力鍋(電気加圧調理器)、洗面所(水洗便器)、腰掛便器」において係争商標を取り消し、その他の商品においては維持するとの判決が下された。
新型材料公司はこれを不服とし、行政訴訟を提起した。この訴訟で、新型材料公司は、「洗面所(水洗便器)、腰掛便器」の両指定商品の登録維持を求め、その他の不許可の商品の登録維持を求めないことを明確に要求した。
北京市第一中級人民法院は一審で以下のように判断した。第1476867号商標は新型材料公司の基礎商標であり、当該商標と係争商標は図形、英語の称呼において完全に同一である。第1476867号商標の指定商品「タイル」と、係争商標の指定商品「洗面所(水洗便器)、腰掛便器」は類似商品であるとすべきである。第1476867号商標は指定商品「タイル」において馳名商標(日本の「著名商標」に相当――訳注)と認定されており、その商業信用は係争商標においても維持することができる。係争商標と引用商標は全体の視覚効果において明らかに異なっており、類似商標を構成しない。係争裁定を取り消し、商標評審委員会は新たな裁定を下すべきである。
商標評審委員会および建材公司、潔具公司はこれを不服とし、北京市高級人民法院に控訴した。二審期間中、新型材料公司の社名が蒙娜麗莎公司に変更された。2016年6月8日、北京市高級人民法院は二審判決で、係争商標の指定商品「洗面所(水洗便器)、腰掛便器」と、引用商標の指定商品「蒸気浴設備、サウナ設備、浴室装置」等は類似商品を構成せず、係争商標と引用商標の標章は、その構成要素や全体的な外観が大きく異なり、類似商標を構成しない。また、第1476867号商標の指定商品「タイル」における商業信用は係争商標で維持することができ、関連公衆は関連商品において係争商標と引用商標を区別することができ、商品の出所の誤認・混同を生じさせないと判断し、控訴を棄却し、原判決を維持する判決を下した。建材公司、潔具公司は再審を請求したが、再審請求は却下された。
係争商標は以下の通り。
検察機関の職務履行のプロセス
建材公司、潔具公司は、二審判決を不服として、北京市人民検察院に監督を申請し、同院は審査を経て最高人民検察院に控訴した。2021年11月11日、最高人民検察院は、本件二審判決に事実認定および法律の適用に誤りがあるとして、最高人民法院に控訴した。最高人民法院は北京市高級人民法院に再審を命じた。2022年6月14日、北京市高級人民法院は、係争商標と引用商標は、類似商品に使用される類似商標を構成するとした判決を下した。蒙娜麗莎公司が提出した証拠は、本件係争商標の登録出願時に、その第1476867号商標がすでに高い知名度を持っていたことを証明するには不十分であり、しかも第1476867号商標は、係争商標および引用商標の指定商品である第11類商品とは異なる商品類別に属する第19類に登録されており、異なる商品における商業信用は、当然他の類別の商品で維持することはできない。蒙娜麗莎公司が提出した証拠は、その第1476867号商標の「タイル」商品上の知名度に基づいており、係争商標が「洗面所(水洗便器)、腰掛便器」商品において引用商標と客観的に十分に区別できることを証明するには不十分である。従って、「洗面所(水洗便器)、腰掛便器」を指定商品として係争商標を登録したことは、商標法第28条の規定に違反する。北京市高級人民法院の再審では、本件二審判決と一審判決を破棄自判し、蒙娜麗莎公司の請求を棄却した。
この事件は、最高検察院知識産権検察弁公室が設立されて以来初の、控訴によって原判決変更に成功した行政訴訟監督事件である。
指導的意義
(一)類似商品および類似商標の認定については、商標が商品または役務を識別するために使用する中核的な機能に基づくものでなければならず、関係公衆に誤認・混同を生じさせやすいかどうかの審査および判断に重点を置くべきである。
(二)商標登録人は、その登録したそれぞれの商標に対してそれぞれ独立した商標の専用権を有し、その前後に登録した商標との間に継続関係があることは当然ではなく、司法実務においては、商標の継続的登録の適用条件を正確に理解しなければならない。
(三)検察機関が知的財産権事件を取り扱う場合、一般的に類似事件検索を実施しなければならない。類似事件検索は、係属中の事件の基本事実、争点、法律の適用において類似性を有する有効な法律文書を検索し、かつ検索された類似事件文書を参照または参考にして事件を処理するものである。
(事件出典:最高人民検察院)
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