事件の概要:
花花牛乳業集団股份有限公司(以下、「花花牛」)は有名な乳製品企業であり、「花花牛」ブランドを1994年に立ち上げ、1996年頃から相次ぎ商標登録を通じて「花花牛」ブランドの保護を強化した。花花牛は類似群コード2907の牛乳、ヨーグルト、乳飲料(乳ベース)などを指定商品として登録を許可された第1185340号商標「 」(登録日:1998年6月21日)、第3234689号商標「 」(登録日:2003年7月14日)、類似群コード2907の牛乳などを指定商品として登録した第15417590号商標「」(登録日:2015年11月6日)、第17728703号シリーズ商標「 」(登録日:2016年10月6日)の専用権を取得している。また、「花花牛」は花花牛が長年使用している商号であり、花花牛の名声や登録商標上極めて高い知名度も担っている。
河南鄭牛生物科技有限公司、河南鄭牛飲品有限公司、河南鄭牛食品有限公司、河南花花牛飲品有限公司(以下、「河南鄭牛」と総称)の4社には董事、幹事、上級管理職の混同、経営の混同の状況が見られ、そのうちの鄭牛生物科技公司は類似群コード3202アルコールを含有しない飲料を指定商品として登録した第4735856号商標「 篆書体花花牛(色指定)」を持ち、同商標の申請日は2005年6月22日、登録日は2008年3月6日となっている。
2012年、「類似商品及び役務の区分表」類似群コード2907に、従来非類似であった「乳飲料(乳ベース)」と類似群コード3202の飲料が類似商品となる旨の内容で注釈5が追加された。河南鄭牛はその後、第4735856号商標「篆書体花花牛(色指定)」を引用し、花花牛が「乳飲料(乳ベース)」を指定商品として登録した新標章「」「」に異議を申し立て、上述の2つの新標章は「乳飲料(乳ベース)」の商品項目で無効とされた。また、河南鄭牛は一般的な書体の「花花牛」を使って、花花牛乳業公司の主要商品と同一、類似または密接に関連する商品項目で商標出願をし続け、両者は商標の権利確定をめぐって10年近く膠着状態に陥った。
上述した商標権利確定をめぐる膠着状態のほか、河南鄭牛は「」、「」、「」などの標章が付された乳酸菌飲料、カルシウムミルク植物性タンパク質飲料、くるみミルク、複合果汁飲料、炭酸飲料などの10種類以上の乳含有飲料および乳を含まない飲料を大量に生産、販売、宣伝、普及し、さらに「花花牛」の商号およびhuahuaniufood.comのドメイン名も登録、使用し、こうした河南鄭牛の行為がいずれも公衆に深刻な誤認・混同を生じさせた。
以上のことから、花花牛は2021年6月、市場の混乱を解消し、商標権利確定の膠着状態から抜け出すため、河南鄭牛の権利侵害および不正競争行為に対し、鄭州市中級人民法院に2件の訴訟を提起した。その後、河南鄭牛も第4735856号商標「篆書体花花牛(色指定)」を主張し、花花牛公司が生産販売する牛乳と乳飲料に対し、鄭州市中級人民法院に訴訟を提起した。こうして両者が互いに提訴して3件の訴訟事件が成立することになり、鄭州市中級人民法院と河南省高級人民法院による一審二審の審理の結果、花花牛は3件すべてにおいて全面勝利した。ここに3件(二審の事件番号に基づく)の紛争の焦点と法院の見解概要を総括する。
(2022)豫知民終193号案:河南鄭牛が「飲料」に自社の登録商標「篆書体花花牛(色指定)」と「」などの標章を使用し、花花牛公司の「牛乳」などの商品における先行馳名商標(著名商標に相当――訳注)「」などの商標および先行商号の権利・権益を侵害したとして、花花牛は区分を超えた保護を求めて河南鄭牛を提訴した。一審と二審の法院はいずれも、飲料と牛乳は区分を超えて類似していると認定でき、河南鄭牛には登録商標を分解し、際立たせて使用することで顕著な特徴を改変している状況が存在することから、商標権侵害の成立を認め、商号およびドメイン名における「花花牛」ならびにそのピンインの使用を不正競争と認定し、200万元の賠償を命じる判決を下したが、先行馳名商標、先行商号を理由に後続登録商標の規範的な使用を禁止する訴えは支持しなかった。
(2022)豫知民終194号案:河南鄭牛が「乳酸菌飲料」「植物性複合飲料」に自社の登録商標「篆書体花花牛(色指定)」と「」などの標章を使用していることは「範囲を超えた使用」「変形使用」にあたり、「」などの先行登録商標、先行商号の権利・権益を侵害しているとし、花花牛公司は河南鄭牛を提訴した。一審と二審の法院はいずれも、被疑侵害商品は河南鄭牛の32類「飲料」に属さず、乳飲料(乳ベース)と類似し、類似商品に類似標章を使用する行為が花花牛公司の登録商標の専用権および先行商号の権益を侵害したと認定し、200万元の賠償を命じる判決を下したが、未変形の「篆書体花花牛(色指定)」標章全体が印章の図案を示し、側面に使用されていることについては、商品の出所を表示する役割を果たしていないとし、権利侵害を認めなかった。
(2022)豫知民終612号案:花花牛公司が「牛乳」「乳飲料」に新標章「」、「」を使用していることは、河南鄭牛の第4735856号登録商標「篆書体花花牛(色指定)」の専用権を侵害しており、特に花花牛の新標章が「乳飲料(乳ベース)」で無効とされた状況下では、より一層悪意ある権利侵害の性質を備えているとして、河南鄭牛は花花牛公司を提訴した。一審と二審の法院はいずれも、被疑侵害商品が29類の牛乳、乳飲料に属し、32類の飲料商品ではないこと、被疑侵害標章が花花牛の登録商標と比較して顕著な特徴を改変していないことから、花花牛公司の自社登録商標の使用は合法であり、権利侵害にあたらないと判断した。
典型事例の意義:
花花牛公司は商標の権利付与・権利確定の紛争過程において鄭牛公司の第4735856号登録商標「篆書体花花牛(色指定)」を根本から否定することができない状況において、自ら商標権侵害と不正競争の訴訟を起こすことにより、河南鄭牛の「登録商標の変形使用」「登録商標の範囲を超えた使用」などの権利侵害、商号やドメイン名などの不正競争の行為を禁止し、登録商標で他者の利益を損ない自身の利益を増大させる悪意ある権利侵害者に効果的な打撃を与え、民事手続きを通じて商標紛争の膠着状態を打破した。
また、花花牛公司は河南鄭牛が提起した商標権侵害訴訟への対応を通じて、乳飲料の新標章「」、「」が権利を侵害していないことを最終的に確認し、新標章の使用における法的障害を取り除き、新標章によるビジネスの展開を確保することができた。
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