基本的な事件概要:
韓国福庫電子株式会社(「韓国福庫」)は、中国子会社の青島福庫電子有限公司(「青島福庫」)と合わせて「福庫」と呼ばれている。1978年に設立された韓国の福庫(CUCKOO電子)は、高圧電気炊飯器と家庭用電化製品の開発・生産に力を入れている。2006年、福庫は金メッキ真鍮、天然タルク、鋳鉄などを内材とする電気炊飯器を開発し、金銅、一品石、打鉄名匠などのシリーズ名をつけ、デザイン専門会社にアートロゴのデザインを依頼した。同時期の市場では、福庫だけが、純粋な石鍋を内釜とする電気炊飯器を設計・生産し、内釜付き電気炊飯器製品「一品石」が発売されると、すぐに広く注目を集めた。
2007年7月、広東省湛江市の住民である鄭某氏が、「電気圧力鍋」などの台所用品について第6175220号商標「一品石」の登録を出願し、同年8月に湛江市に某公司を設立した。2008年4月、鄭某氏は、別の第6671221号商標「一品石」の登録を出願した。当該商標は前の商標とは若干フォントが異なるものであり、著作権図面および本件の関連標章は、以下の添付写真で示すとおりである。
鄭某氏の上記2つの商標は、それぞれ2010年2月と5月に登録が認可された。2つの商標が登録されて5年が経過した後、2015年11月以降、鄭某氏は青島福庫とその販売店が商標権を侵害しているとして、工商部門への行政摘発を請求した。福庫もまた、行政摘発を受けた後の2016年以降、鄭某氏の「一品石」商標について相前後して不使用取消審判・無効審判申請を行ったが、商標の登録認可後すでに満5年を経ているなどの要因により、当該登録商標の取消または無効に至ることはできなかった。
2016年6月、鄭某氏および湛江の某公司が訴状を提出し、青島福庫を法院に提訴した。
事件分析:
委託を受けた集佳の弁護士は、福庫の既存の著作権などの観点から抗弁を行った上で、反訴を行うか、鄭某氏および湛江の某公司を著作権侵害で別途提訴することを助言した。一審法院が青島福庫の反訴を受け入れなかったため、青島福庫は鄭某氏および湛江の某公司を著作権侵害で別途提訴した。
両事件を総合すると、著作権事件の勝敗は非常に重要である。核心ポイントは、著作物「 」の独創性と相手方の接触可能性の両方についての証拠収集と論理である。そこで、集佳の弁護士は、大量の証拠を掘り起こした結果、従来書法の文字造形はすでに《著作権法》が定める著作物の独創性の要件を満たしており、書法美術の著作物を構成すると思料した。同時に、被控訴人が韓国の他のブランドをはじめ多くの周知ブランドについて、冒認出願を行っていることを証明し、被控訴人標章と既存の美術の著作物とが高度に類似することを踏まえ、確率学、論理推理、高度の蓋然性などの観点から、これに接触可能性があることを強調した。
商標権侵害事件について、集佳の弁護士は、代理の過程で、福庫の既存の著作権を重点的に強調し、鄭某氏などによる冒認出願を行った商標には実質的合法性がなく、その悪意の商標権行使の行為は権利濫用に当たり、最高人民法院第82号指導事例「歌力思」事件の裁定規則などに依拠し、本請求を支持すべきではないとした。
法院の判決:
青島福庫の両事件の訴訟請求は、一審、二審の手続きでいずれも法院の支持を得られなかったため、法に基づき最高人民法院に両事件の再審を申し立てた。最高人民法院は両事件を審査した後、いずれも法に基づき再審理を行う旨の決定を下した。
再審理を経て、最高人民法院は著作権再審事件で次のように認定した。書法「 」の文字造形は、個性的な選択、取捨、配置の結果であり、著作者の独創性の表現でもあり、《著作権法》上の美術の著作物を構成するものである。被疑侵害表示は、美術の著作物「 」からパブリックドメインにある創作素材を排除した独創性の表現を使用しており、両者は実質的な類似性を構成している。《著作権法》上の接触可能性は、国内の著作物への接触に限定されるものではなく、海外で発表された著作物に対しても、国内の主体による接触可能性もあるとしている。被疑侵害表示が商標登録されているか否かは、他人の著作権侵害における正当な抗弁事由にはならない。これを受けて、最高人民法院は再審において、一審と二審の判決を取り消し、代わりに鄭某氏と湛江の某公司に対し、侵害行為の差止めと賠償責任の負担を命じる旨の判決を下した。
最高人民法院は、商標権再審事件について次のように認定した。鄭某氏と湛江の某公司による本件商標権の取得・使用行為は、青島福庫の適法な既存の著作権を侵害した上で行われたものであり、信義誠実の原則に反したため、正当性を有しない。それにもかかわらず、著作権を侵害した上でなお青島福庫に対し商標権侵害訴訟を提起した行為は権利濫用に当たり、その請求は合法的な権利の基礎を欠くため、支持しない。これにより、最高人民法院は、一審と二審の判決を取り消し、代わりに鄭某氏と湛江の某公司の請求を棄却する旨の判決を下した。
典型的な意義:
本著作権再審事件では、最高人民法院が書法美術の著作物に対し、独創性の認定、実質的な類似性の判断、接触可能性の推定を行い、論理推理と日常生活の経験を用いて関連証拠に対し全面的かつ客観的に審査認定などを行ったものであり、類似事件に対して指導的意義を有する。
最高人民法院が商標権侵害再審事件について下した判決は、違法な冒認出願者が、形式上は合法である登録済み商標を通じて悪意の賠償請求を行おうとする企てに対し、中国の司法機関が司法の面からこれを阻止するという決意を改めて示したものであり、権利者が同様の状況に遭遇した際に、合法的に権益擁護を行う方法について、典型的な判例を新たに提供するものである。
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