事件の概要:
致同の前身は北京会計士事務所であり、1981年に設立され、改革開放後の北京市において第1号の会計士事務所であり、中国で最も歴史のある会計士事務所の1つでもあり、その後次第に成長し、会計監査、税務、コンサルティング、評価と査定、プロジェクト管理などの全方位的な専門サービスが提供可能な総合ビジネスコンサルタントとなった。2009年にGTILに加盟し、中国における唯一の加盟事務所となり、2012年に正式に名称を「致同」に変更し、「致同国際」はGTILが全世界で唯一使用する中国語名となった。サービスを提供する顧客には中国石油化工集団有限公司、中国石化新疆能源化工有限公司、中石化煉化工程(集団)股份有限公司、中通国脉通信股份有限公司などの国内の有名大手企業が含まれる。
致同は第35類会計、第36類金融サービス、第42類無形資産評価などのサービスについて許可を受け登録されている商標「致同」の権利者であり、致同国際による授権を受け、第35類会計サービス上の商標「 」、第36類金融サービス上の図形商標「 」を使用する権利を有し、さらに当該2件の図形商標について権利保護を行う権利を有する。長期にわたり幅広く宣伝、使用されていることにより、上述の商標はすでに非常に高い知名度と影響力を有する。
致同(蘇州)資産評価有限公司は2019年4月に設立され、登記住所は蘇州工業園区にあり、2021年9月(一審過程において)に「財信(蘇州)資産評価有限公司」に名称を変更した。2020年に、致同(蘇州)資産評価有限公司は「」をその微信(WeChat)公式アカウントのアイコンとして使用し、当該公式アカウントで発表する文章の末尾の「私たちについて」の部分で「【致同】」という表現方式を使用した。また、致同(蘇州)資産評価有限公司はさらにその公式ウェブサイトの「会社紹介」の部分で会社の略称を「致同評価」とし、その発行した『資産評価報告書』のトップページに「致同」の文字と「」のマークを使用した。財信公司は改名前に、微信公式アカウント名、公式ウェブサイト、会社の登記住所、事務所住所、発行した『資産評価報告書』などの多くの部分に「致同(蘇州)資産評価有限公司」のフルネームを使用し、さらに微信公式アカウントの文章の末尾でもその「本社は北京市にある」と記載し、公式ウェブサイト上で自社が「中国石油、中国石化…などの国内外の有名企業に相次いでサービスを提供している」と紹介した。
警告しても是正しない状況の下で、致同は集佳に致同(蘇州)資産評価有限公司に対する訴訟の提起を委託した。集佳の弁護士は受諾後に権利としての商標の知名度と権利侵害者の主観的な悪意を2つの重要な切り口として、主に権利侵害という定性的な観点と賠償という定量的な観点から大量の基礎的な作業を行った。
法院の判決:
江蘇省蘇州市中級人民法院は審理を経て次のように判断した。財信公司が「致同」と営業標識である「 」を使用する行為は商標権侵害を構成し、「致同」の文字をその企業名として対外的に宣伝する行為は不正競争を構成し、「本社は北京市にある」、「複数の国内外の有名企業にサービスを提供している」と紹介する行為は他人の誤解を招く虚偽の宣伝を用いた不正競争行為を構成することから、財信公司に対して本件にかかわる商標権侵害と不正競争行為を直ちに停止し、致同のために影響を除去する旨の声明を掲載し、経済的損失および合理的支出計100万元を賠償することを命じる判決を下すものとする。
財信公司は一審判決を受け取った後に、主体的に致同に連絡を取り、一審判決を受け入れる旨の意思を表明し、判決の執行と和解に関する事項について話し合いを試みたが、双方の話合いは不調に終わり、財信公司は一審判決に対して控訴を提起した。
典型事例の意義:
本件は致同がブランドを守るために民事訴訟を通じて権利保護を図った初めての事件であり、今回の権利保護を通じて、その合法的な権益が初歩的に保護されただけでなく、その他の権利侵害者および潜在的な権利侵害者に対しても一定の抑止効果を発揮することが可能である。
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