事件の背景:
原告・フェラーリ社は、第12類「自動車等の商品」で登録が認められた「法拉力(Ferrariの漢字表記――訳注)」、「Ferrari及び跳ね馬のエンブレム」商標権者であり、前記2商標の登録日は1995年である。被告・冷君(長沙法拉利酒業貿易有限公司の株主――訳注)は2004年2月に第33類「ワイン等の商品」で「法拉利」商標を出願し、当該商標は2007年1月に登録を認められた。被告はワイン商品に「法拉利」、「Falali」、「跳ね馬のエンブレム」商標を使用するとともに、商品の宣伝において故意に原告の創業者であるエンツォ•フェラーリ氏の姓名、肖像、レーシングカー、レースとあの手この手を使って自社のワインがスポーツカーブランドのフェラーリと関連があるかのように喧伝し、ひどい場合には自社ワイン製品を原告の典型的スポーツカーの型番から命名していた。このほか、被告・長沙法拉利酒業貿易有限公司はさらに「法拉利」を企業の屋号として用いていた。集佳弁護士事務所は原告からの依頼を受け、迅速に代理業務を展開し、関連する証拠、資料を収集した。
法院の判決:
湖南省長沙市中級人民法院は以下の一審判決を下した。
(1)被告はただちに原告の「法拉力」、「Ferrari及びエンブレム」商標権侵害行為を停止すること。
(2)被告・長沙法拉利酒業貿易有限公司はただちに企業名称における「法拉利」を屋号として使用することを停止すること。
(3)被告は原告に対し、経済損失200万元を連帯賠償すること。
(4)被告は「瀟湘晨報」(湖南省の現地紙――訳注)に声明を掲載し、影響を解消すること。
典型事例の意義:
本案件の典型事例の意義は主に以下の2点である。
第一に、原告は自社の「法拉力」馳名商標(日本の著名商標に相当――訳注)について、被告が登録商標「法拉利」を使用する行為が権利侵害を構成すると主張したことである。本案件おいて、被告の「法拉利」商標は最終的に無効を宣告されたものの、一審において、被告の「法拉利」商標はなお有効な状態であった。このような状況にあって、原告は、同社の「法拉力」商標が、被告が「法拉利」を出願、登録する前にすでに著名な状態に達していたことを証明するための十分な証拠を示すことで、権利衝突の障害を克服した。一審法院は最終的に被告が登録商標「法拉利」を使用する行為が権利侵害を構成すると認定したのである。
第二に、原告は馳名商標及び被告の悪意を主張することで、5年の除斥期間という制限を打ち破ったことである。本案件で原告が起訴した際、被告の登録商標「法拉利」は既に登録から5年が経過していたが、原告は、自社の「法拉力」商標は被告が「法拉利」を出願、登録する前に著名であり、且つ、被告が「法拉利」商標を出願、登録したことには悪意が伴うと証明したことで、5年の除斥期間の制限を打ち破ることに成功し、最終的に一審法院の支持を得たのである。
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