事件の事実:
特許権者であるM-I有限公司は世界最大の多国籍油田技術サービスグループ企業のシュルンベルジェの傘下にある。シュルンベルジェおよびその傘下の各子会社と関連会社は油田技術の各分野において大量の基本特許を保有している。
M-I有限公司は2019年下半期に河北省の某機械製造有限公司について米国国際貿易委員会において関税法337条調査手続きを開始し、さらに中国北京知識産権法院において複数件の特許権侵害訴訟を提起した。
上述の特許権侵害訴訟に係るM-I有限公司が保有するフレームとスクリーンに関する中国の特許およびそのファミリー特許について、河北省の某機械製造有限公司は請求人として2019年末と2020年初頭にそれぞれ国家知識産権局に無効審判を請求した。2件の無効審判請求において、請求人は大量の証拠を列挙し、技術的特徴を組み合わせる方式により係争特許が進歩性を欠くことを証明しようとした。
法院の判決:
集佳チームは係争特許の技術的解決手段および関連の先行技術について詳細に説明し、専利審査ガイドラインにおける3ステップ法の評価基準に基づき十分な理由の説明および緻密な分析を行った結果、国家知識産権局は2件の特許権のすべての有効性を維持するとの審決を下した。
事件の評論・分析:
2件の争点は次のとおりである。区別される技術的特徴が解決しようとする技術的課題をどのように認定するか、およびこれに基づき先行技術が示唆を与えたか否かをどのように認定するか。
例えば、係争特許の無効審判請求において、請求人と特許権者が共に認めているが、特許の請求項1と証拠1、証拠2または証拠6の相違点は少なくとも次のとおりである。成形プラスチックフレームの辺縁部はそれらの四隅の角部で連結し、周辺の補強部品を限定した金属製箱型断面部材により内部から補強されており、前記金属線の端部は前記金属製箱型断面部材上で固定されている。区別される技術的特徴について、請求人の見解によると、その役割とはスクリーンフレーム全体の強度を高めることであり、証拠3~7のいずれも金属製箱型断面角パイプ部材を四隅の辺縁部とすることによりスクリーンフレーム全体の強度を強化することができるという技術方案を公開しており、役割が同じである以上、技術的示唆を当然与えるものであることから、請求項1はそれらの組合せと比べると進歩性に欠ける。しかし実際は、係争特許の背景技術を踏まえると分かるが、発明者が本発明を思い付いた時に直面した技術的課題とはスクリーンの過度の振動、流体の迂回、密閉部品の損壊、過度の飛び散りなどの問題であり、発明者の創造的労働を通じて、スクリーンフレームの強度を向上させることによりその過度の振動およびその他の問題を防止することができることを発見した。したがって、上述の区別される技術的特徴に基づき、係争特許が実際に解決しようとする技術的課題はスクリーンフレームの強度の向上および使用中の過度の振動の防止とすべきである。しかし当該技術的課題の解決において、その他の先行技術はいかなる示唆も与えておらず、技術的思想すらも完全に異なっている。合議体はこれに基づき特許の有効性を維持した。
もう1つの特許についても似たような状況が存在しており、区別される技術的特徴が解決しようとする技術的課題に対する請求人の理解に誤りがあることから、その請求理由はいずれも成立しない。合議体は当該特許の有効性も同様に維持した。
ここで、区別される技術的特徴が解決しようとする技術的課題をどのように認定するかが本件の核心的な問題となる。
国家知識産権局公告第328号では「専利審査ガイドライン」の改正において、進歩性の判断のための3ステップ法の第2段階として「区別される特徴が保護を求める発明において実現することができる技術的効果に基づき発明が実際に解決しようとする技術的課題を確定する必要がある」旨が明確に規定されている。まさに本件において請求人が、先行技術の特徴の「単純な組合せ」により「安易に」本発明を取得することができると誤解した点である。対象発明をベンチマーク、道標とする状況で、先行技術から技術的特徴を見出し、積み重ねることは、当然簡単で容易なことである。しかし問題は、対象発明がない状況において、ベンチマーク、道標をどのように確定するかということである。実際の発明過程において、当業者は大量の先行技術に直面しており、明確な技術的示唆がなければ、一人の創造力のない「人」として、彼は先行技術をどのように用いて発明が実際に解決しようとする技術的課題を解決するかを知る術はなく、当該解決手段自体も困難、複雑ではない可能性がある。したがって、表面上は自明であるような発明であっても実は進歩性を備えている可能性がある。
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