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No.144 March.28, 2018
 
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西安の大雁塔
 
目 録
ニュース
中国国務院新聞弁公室が2017年中国知的財産権発展状況を発表
中国国家統計局:2017年中国の国際特許出願件数が世界第2位に
中国商標登録審査の所要期間を2020年までに4か月以内に短縮
第7回日中韓首脳会談共同宣言:地域の知的財産権体系の構築を推進
中国国家版権局とメキシコ文化省が著作権協力MOU(了解覚書)を締結
注目判決
集佳の訴訟代理成功事例――騰訊計算機公司、騰訊科技公司と 欧珀公司などの訴訟前の行為保全事件
集佳の訴訟代理成功事例――上海三聯(集団)有限公司、上海三聯(集団)有限公司呉良材眼鏡公司 対 南京呉良材眼鏡有限公司などの商標権侵害および不正競争紛争事件
集佳の最新動向
集佳弁護士が韓国知的財産協議会年度会議の招聘を受け、主題講演を行う
集佳とラフィットが上海知的財産権法院・自由貿易区関連知的財産権関連の裁判白書発表会および司法保護の座談会に出席
 
 
ニュース

 
中国国務院新聞弁公室が2017年中国知的財産権発展状況を発表

 

   近頃、中国国務院新聞弁公室は、2017年の中国知的財産権の発展状況に関する発表記者会見を開いた。中国国家知識産権局の申長雨局長、国家知識産権局商標局の崔守東副局長、国家版権局の于慈珂報道官が2017年の中国の知的財産権発展状況について説明を行った。

   申長雨氏は、2017年に中国の知的財産権法令の整備が着実に進んだことを指摘した。《反不正当競争法》改正が可決され、《専利法》、《専利代理条例》、《人類遺伝資源管理条例》の制定・改定作業が実質的な進展をみせた。また、《著作権法》、《オリンピック標章保護条例》、《国防専利条例》、《植物新品種保護条例》、《生物遺伝資源獲得・利益配分管理条例》の制定・改定作業も積極的に進められている。今後はさらに、知的財産権分野の独占禁止に向けた法執行の指針の発表を促し、新分野、新業態のイノベーションの成果たる知的財産権の保護制度の研究を深めていく。

   消息筋によれば、2017年の中国における知的財産権の発展に向けた各活動は、新たに重要な進展をみせ、知的財産権の保護がよりいっそう厳格化された。専利行政法執行件数は6万7,000件で前年同期比36.3%増、商標行政法執行件数は3万100件で金額は3億3,300万元に達した。版権部門の権利侵害・海賊版取締事件は3,100余件、没収された海賊版製品は605万件に及んだ。権利侵害品の輸出入に対する税関の水際取締は、荷口数で1万9,200ロット、侵害製品件数で4,095万件、金額にして1億8,200万元に達した。中国全国の法院で新規に受理した知的財産権にかかわる民事、行政、刑事の一審事件は21万3,500件、結審は20万3,000件で、それぞれ前年同期比40.37%、38.38%の増加となった。検察機関が逮捕の許可状を出した知的財産権侵害関連犯罪事件は合計2,510件で4,272人、起訴件数は3,880件でかかわった人数は7,157人である。公安機関が知的財産権侵害および模倣・粗悪品製造販売犯罪事件を摘発した件数は、合計1万7,000件、金額にして64億6,000万元で、重大知的財産権侵害犯罪事件の挂牌督弁(事件の調査・処分および改善任務について、期間を定め、公示などの公開方式により定めた期間内に完了するよう督促する方式――訳注)は44回に及んだ。「護航」「雷霆」「清風」「龍騰」「剣網」「溯源」などの行政法執行特別行動が推進された。知的財産権保護に関する社会満足度は、76.69ポイントにまで高まった。

   記者会見ではさらに、国家知識産権局として専利・商標にかかわる総合的な法執行を積極的に指導し、各種の権利侵害行為を摘発し、《専利法》改正を契機として権利侵害に関する懲罰的賠償制度の整備を加速し、真の意味で違法に伴う代償を顕著に増大させ、法律による抑制効果が充分に発揮されるように図っていくことを明らかにした。知的財産権の保護の厳格化、拡大化、迅速化、国内外の同等化の各作業を加速度的に統制、推進し、権利付与・権利確定、行政法執行、司法保護、仲裁・調停、業界自律などの各段階を網羅した保護体系が形成され、イノベーションと市場の担い手に向けて、よりいっそう効果的な法的保障を提供する。(出所:人民法院新聞伝媒総社)

 
中国国家統計局:2017年中国の国際特許出願件数が世界第2位に

 

  中国国家統計局社科文司の張仲梁司長は、近頃、国家統計局公式サイトにおいて、2017年に中国の出願人が「特許協力条約」に基づく国際特許出願(PCT国際出願)の件数および論文被引用数がいずれも世界第2位となり、中国の国際科学技術論文総数は9年連続で世界第2位を安定的に維持したと表明した。

  データによれば、中国の特許出願件数は2011年には世界首位となり、2017年は138万2,000件に達している。2017年に中国の出願人によるPCT国際出願の件数は4万9 ,000件に達し、世界第2位となった。中国の国際科学技術論文総数は、9年連続で世界第2位を安定的に維持している。2017年の論文被引用数は、ドイツ、イギリスを超え、世界第2位に躍り出た。張司長は、文中で「天の時、地の利、人の和」に触れ、さらには数十年来の挙国一致、協心戮力(心を1つに力を合わせること――訳注)により、中国のテクノロジー分野の進歩は、「水到渠成、順理成章」(「水到れば渠成り、理に順えば章を成す」条件が整えば物事は必然的に成就し、筋道を通せば自ずと事が進むこと――訳注)と言えるとした。

  第1に、中国政府と中国社会は科学技術のイノベーションと技術的進歩を極めて重視している。

  第2に、中国の14億人に及ぶ総人口、絶えず改善される教育体系が、技術革新を支える人的資源を十分に供給している。

  第3に、中国経済の持続的成長が、技術革新に十分な資金的保障を供している。

  第4に、先進国・地域と比べ、中国は産業集中度が低いことが、企業の技術革新の加速を促している。

  第5に、中国の産業基盤は厚く、付帯システムも整備されており、技術革新が産業によって良好に支えられる一方で、生活が豊かになり続ける14億の人口によって、中国は当今の世界最大の消費市場の1つとなり、技術革新の実用化の舞台となっている。

  「中国製造」(メイド・イン・チャイナ)の技術価値について、張司長は次のように総括している。中国の技術水準は、世界の製造強国と比べるとなお一定の差があるが、一部の分野ではすでに遜色のない状況である。イノベーションによる発展という理念が人心に浸透していき、それに伴ってイノベーション主導型発展戦略もさらに推進され、中国の技術革新の歩みは、よりいっそう安定し、力強いものとなるであろう。(出所:人民網)

 
中国商標登録審査の所要期間を2020年までに4か月以内に短縮

 

  中国国家知識産権局商標局の陳文彤副局長は、先日、次のように述べた。先日印刷、配布された「商標登録利便化改革三年攻略計画(2018~2020年)」に従って、2018年の年末までに中国商標登録審査の所要期間を6か月に短縮し、2020年には4か月以内に短縮する。

  全社会の起業・イノベーションの活力と商標意識が絶えず高まり、これに伴って中国の商標登録出願件数は、ここ5年間で年平均29%の増加を示しており、2017年商標登録出願件数は574万8,000件に達し、前年同期比55.7%増となった。既存および新規の商標は膨大な数にのぼり、商標登録管理業務に対して、よりいっそう高い要求を突きつけている。

  2016年以来、中国における商標登録の利便化水準は絶えず向上し、商標登録審査の所要期間は、すでに法定の9か月から8か月にまで短縮されている。しかし、市場の担い手と社会公衆の商標登録の利便化に対する需要と期待の高まりに伴い、深いレベルで幾つかの問題や矛盾が徐々に顕在化してきている。

  このような背景の下、旧国家工商行政管理総局は、適時に計画を打ち出しており、「商標登録所要期間の大幅短縮」を主要目標として、審査効率の向上、審査の仕組みの整備、出願手続の簡素化、手数料の合理的調整、技術的サポートの強化、紙ベースでの商標記録保管の削減、法律改正の推進という7つの方面で利便化改革の堅塁攻略の課題を明確化している。(出所:新華社)

 
第7回日中韓首脳会談共同宣言:地域の知的財産権体系の構築を推進

 

  近頃、李克強首相は、第7回日中韓サミットに出席するため日本を正式に訪問した。この期間の5月9日に発表された第7回日中韓サミット共同宣言において、3国の首脳は、経済の持続的な成長・繁栄を維持するためには、創造性を重視し、公正競争を促進する知的財産権体系を構築する必要があるとの認識を示した。また、特許庁長官レベルでの政策対話も含めた3国間の知的財産権協力は、地域の知的財産権体系の構築を進める上で重要な役割を有しており、これについて3国が協力をさらに強めていくことを期待するとの認識も示した。

  また、現地時間5月11日午前に、李首相は、安倍晋三首相と共同で日中知事省長フォーラムの開幕式に出席し、挨拶を述べた。挨拶の中で李首相は、今回の訪日期間中、日中両国政府がさまざまな協力事項の合意に達し、両国の地方と企業の協力の深化に向けて条件と空間を整え、双方がイノベーション・発展の協力を進め、イノベーション・対話の仕組みを構築し、両国のハイテク分野および人口高齢化、医療衛生への対応など経済社会の発展と国民生活の需要に適応していく分野で段階的に技術協力を推進し、知的財産権を確実に保護していくことに同意したと述べた。(出所:国家知識産権局公式サイト)

 
中国国家版権局とメキシコ文化省が著作権協力MOU(了解覚書)を締結

 

  国家版権局から得た情報によれば、国家版権局とメキシコ文化省は近頃、メキシコの首都メキシコシティーで著作権協力MOU(局長クラス)を締結した。これによって、中国・メキシコの二国間著作権協力の枠組みを正式に構築し、著作権の交流・協力の常態化・仕組み化の実施に向けてスタートを切ることが示された。これは、国家版権局が世界的に締結を進めるなかで8つ目の二国間著作権協力MOUであり、「一帯一路」イニシアチブに積極的に参加し、二国間著作権交流・協力を強化する上でまた1つの成果であり、中国著作権の国際的影響力の拡大、特にラテンアメリカ諸国との著作権協力の強化にとって、重要な模範と促進の役目を果たす。

  国家版権局版権管理司の于慈珂司長とメキシコ文化省下部のメキシコ国家著作権局Manuel Guerra Zamarro局長がそれぞれに双方を代表してMOUに署名した。当該MOUに基づき、国家版権局版権管理司とメキシコ国家著作権局は、協力を強化し、著作権をめぐる注目の論点について検討を進め、著作権にかかわる立法、法執行、保護、紛争解決などの方面で情報および方法について意見交換を図る。双方は、必要に応じて年度作業計画を策定・実行し、著作権分野での具体的な協力・交流活動を進め、当該MOUの役割を充分に発揮させていく。(出所:中国知識産権資訊網)

 
 
注目判決

集佳の訴訟代理成功事例――騰訊計算機公司、騰訊科技公司と 欧珀公司などの訴訟前の行為保全事件

 

 基本状況:

 被申立人である欧珀公司(OPPO社)と訊怡公司は、ユーザーが公式サイトでダウンロードした「騰訊手機管家」(テンセント携帯電話管理ツール)をインストールし、さらに「騰訊手機管家」でアプリをダウンロードし、インストールする過程で、OPPO携帯電話上で強制的にユーザーにOPPOアカウントを登録させ、パスワード入力による身分認証などのポップアップ・ウィンドウを繰り返し表示させる行為を実施し、ユーザー体験および申立人のソフトウェアの正常な稼働を妨害した。ダウンロードしたソフトウェアのスキャン時にリスクが検出されたなかった後、なおも「OPPOソフトウェアショップでアプリを快速かつ安全にインストールすることをお薦めします」、「OSショップではスタッフが直接検査したバージョンが入手可能です」などのメッセージを表示するとともに、申立人と被申立人の製品・サービスのUI設計を差別化し――右側の「ソフトウェアショップ・インストール」オプション表示を緑色ハイライトで際立たせ、ユーザーの判断に影響を及ぼし、ユーザーの選択に干渉し、かつスキャン完了前に、左側の「インストール継続」オプションを使用不可状態に、右側の「ソフトウェアショップ・インストール」オプションを使用可能状態に保ち、ダウンロードしたソフトウェアの正常インストールを阻碍したうえ、ユーザーが「ソフトウェアショップ・インストール」オプションをクリックした場合には、システムで自動的に「OPPOソフトウェアショップ」にジャンプし、再ダウンロードとサイレントインストールを進めるようにした。申立人の提出した証拠ではまた、被申立人欧珀公司と訊怡公司は、申立人の「騰訊手機管家」製品と、被申立人およびその他競合他社の同類製品とを差別化する行為を実施していたことが明らかに示されており、被申立人の「OPPOソフトウェアショップ」は、干渉を受けることなくサイレントでダウンロードおよびインストールを実行するほか、ユーザーが同類ソフトウェア「豌豆莢」をダウンロード・インストールし、「豌豆莢」を通じてアプリをダウンロード・インストールする場合にも、上記のポップアップ・ウィンドウを表示させず、ジャンプ設定をしていなかった。

 そこで、騰訊計算機公司、騰訊科技公司は、2017年5月26日に武漢市中級人民法院に訴訟前の行為保全を申し立て、被申立人の欧珀公司、訊怡公司、恒華経営部に対して行為保全の措置を取るよう請求した。

 判決:

 武漢市中級人民法院は審査において次の要素を考慮した。1) 申立人は本件の利害関係者である。申立人の提出した「騰訊手機管家」公式サイト・ドメイン名届出情報照会、ソフトウェア著作権登録証明書などの証拠に基づき、両申立人は「騰訊手機管家」のソフトウェア運営者およびソフトウェア著作権者であり、保全申立てを行う権利を有する。2) 被申立人は、不正競争行為を構成する可能性がある。被申立人である欧珀公司、訊怡公司は、申立人の「騰訊手機管家」製品と被申立人およびその他競合他社の同類製品とを差別化する行為を実施しており、ユーザーに出所不明のリスクを提示し、かつ出所不明のアプリのインストールを許可するパスを設定することを告知した状況下で、被申立人の行為は、申立人の「騰訊手機管家」ソフトウェアを差別化し、その正常使用を故意に妨害し、ユーザー体験を低下させ、ユーザーの選択に干渉し、これによって「騰訊手機管家」ソフトウェアの著名度、市場影響力およびユーザー基盤を利用して自社製品の普及を図った疑いがあり、不正競争を構成する可能性がある。被申立人である恒華経営部は、OPPO携帯電話の販売代理店として、その携帯電話販売行為は客観的に見ても申立人に対する影響を拡大させており、不正競争行為の幇助を構成する可能性がある。3) 被申立人の上記行為が速やかに禁止されなければ、申立人の利益を大きく侵害することになり、かつ申立人の競争上の優位性と市場シェアに対して補填し難い損害をもたらす可能性がある。4) 被申立人に不当行為の停止を命ずることによって公共の利益に損害をもたらすことはない。本件の保全措置は、被申立人の妨害行為の停止を要求するにとどまり、それ自体はOPPO携帯電話の正常な使用には影響せず、消費者の利益と社会経済の秩序に不利な影響を生じさせることもない。5) 申立人は相応の担保を提供している。担保の金額および担保の形式の確定については、申立人の勝訴可能性の高低や、被申立人が関連行為の停止によって被り得る損失などの要素を、総合的に考慮して判断する必要がある。本件において申立人は、保険会社から発行された責任保険1,000万元の保証状を担保に提供しており、申立人の提供した上記担保の金額および担保の形式は要件を満たすものである。

 以上から、武漢市中級人民法院は次のとおり裁定した。1) 被申立人である欧珀公司、訊怡公司は、OPPO携帯電話上でユーザーが申立人の公式サイトを通じ「騰訊手機管家」ソフトウェアをダウンロード・インストールする過程において、設定により「OPPOソフトウェアショップ」のソフトウェア再ダウンロード・インストール画面へとジャンプさせる行為を直ちに停止し、かつ類似方式により前述の行為を実施してはならない。2) 被申立人である欧珀公司、訊怡公司は、OPPO携帯電話上でユーザーが申立人の「騰訊手機管家」を通じてソフトウェアをダウンロード・インストールする過程で、設定によりポップアップ・ウィンドウ画面を検査し、「OPPOソフトウェアショップ」のソフトウェア再ダウンロード・インストール画面へとジャンプさせる行為を直ちに停止し、かつ類似方式により前述の行為を実施してはならない。3) 被申立人である恒華経営部は、被申立人である欧珀公司、訊怡公司が上述の行為を停止するまでOPPO携帯電話の販売を一時停止する。

 典型的意義:

 本件は、湖北省「2017年度十大典型知的財産権事例」に選出されている。

 1.本件は、モバイルインターネット業界における競争の新たな展開を示しており、典型性を備えた一件で、社会の注目を集めた。本件において、被申立人は、携帯電話メーカーとして、携帯電話の基礎となるシステムを掌握しているという優位性を利用し、技術的手段により申立人が適法に提供するソフトウェアの正常稼働を妨害しており、申立人はこれを法院に訴え、訴訟前の行為保全を申し立て、その後さらに被申立人に損失8,000万の賠償を訴訟で請求した。被申立人は、それらの行為は携帯電話の使用上の安全を守るためのものであり、不正競争行為には当たらない旨を主張した。本件紛争の発生時には、反不正当競争法はまだ改正されておらず、当該行為を処理する直接の根拠規定が無かったため、本件の処理は、関連業界における競争領域の境界線画定と、競争秩序の規範化に直接かかわるものとなった。本件は、全国的に見てもまだ新しいタ類型の事件であり、さらに紛争当事者が双方とも全国的な著名なテクノロジー企業である「騰訊」(テンセント)と「OPPO」であったこともあり、大きな注目を集めた。法院が訴訟前の行為保全の措置を取った後、各大手インターネットメディアおよび紙面メディアがこぞってこれを報道し、本件は大きな影響をもたらした。

 2.本件では、行為保全の適時性が体現され、不当行為が有効に制止され、損害のさらなる拡大が防止された。この種の事件は、全国的にもまだ成熟した手法が確立されていないが、法院は、インターネット環境下では、権利侵害のスピードが速く、範囲が広範にわたり、影響が大きいという特性を考慮し、さらにはインターネット製品の世代交代が急速であること、ユーザー体験が一旦損なわれれば、その回復は難しく、ユーザー流失と使用習慣の変化を招くことになること、被申立人の上記行為がもし速やかに禁止されなければ、申立人の利益が深刻に侵害され、かつ申立人の競争上の優位性と市場シェアに補填し難い損害をもたらす可能性があることを考慮した。よって、訴訟前の行為保全の適時性、効率性を体現するため、法院は、申立成立後、当日中に資料を審査して処理意見を出し、かつ被申立人に対して迅速に禁止命令を下して、本件にかかわる不当行為を有効に制止し、補填し難い損害の発生を防止し、本件の後続処理に向けて良好な基盤を築いた。

 3.本件処理の効果は良好であった。この事件では被申立人の不当行為が詳細に述べられ、停止すべき具体的な措置が提示され、関連業界の競争行為と競争秩序の規範化に向けて直接的な指針が提示されたことが第1で、第2に、当事者間の和解の達成が効果的に促された。前段階で法院が公正かつ効果的に訴訟前の禁止命令を発し、本件にかかわる不当行為が適時に制止されたため、双方間に良好な和解の雰囲気が醸成された。法院はまた、双方がそれぞれソフトウェアとハードウェアを主な取扱対象としているので、提携の余地が多いにあり、しかも双方が以前にも事業提携していたことがあり、水と油のように相容れない敵対関係にはないと判断した。法院は、双方との意思疎通を重ね、最終的に双方の和解を促して、深い提携関係を締結させるまでに至った。

 
 
集佳の訴訟代理成功事例――上海三聯(集団)有限公司、上海三聯(集団)有限公司呉良材眼鏡公司 対 南京呉良材眼鏡有限公司などの商標権侵害および不正競争紛争事件

 

  主要状況:

  上海三聯(集団)有限公司呉良材眼鏡公司(以下、「上海呉良材」)の前身は、1719年に上海で創業した澄明齋珠宝玉器舗で、1807年に呉良材氏がこれを呉良材眼鏡店に改めた。1947年、呉良材氏の子孫である呉国城氏が南京市で支店を開設した。1979年、南京呉良材眼鏡有限公司(以下、「南京呉良材」)は、「呉良材」の文字をその企業名称として登録した。歴史的な原因から、上海と寧波の呉良材企業は、公私合営の形態を取ってから一切の関連性を持たなくなってしまった。1989年以降、原告は相継いで複数の「呉良材」文字商標を登録し、長期の使用を経て、市場において高い著名度を有するようになり、かつ2004年には著名馳名商標(日本の著名商標に相当――訳注)に認定された。2015年、原告は、南京市の呉良材とその支店などの登記・登録やその経営において「呉良材」を含む企業名称と標章が使用され、さらにその屋号が憚り無くフランチャイズ経営に使用されていること、また、対外的にも「南京呉良材公司は、上海呉良材眼鏡公司が設立した南京の支社が発展してきたもの」など公言していることを知った。両原告は、被告が商標権侵害と不正競争を構成していると考え、南京呉良材による「呉良材」を含む企業名称の使用の停止、3被告による権利侵害行為の停止、経済損失300万元の賠償、および影響の除去を命じる判決を求めた。

  判決:

  上海市黄浦区人民法院は審理の結果、次のように判断した。南京呉良材は、1947年設立の呉良材南京分公司との間に一定の歴史的関係が確かに存在し、かつ南京呉良材の企業名称の登録時点は原告の商標登録時点よりも先行していることから、同社が「呉良材」の文字を含む企業名称を登録・使用することは、原告に対する不正競争を構成しない。ただし、南京呉良材が、その企業名称の著名度と影響力が南京市の範囲をすでに超えたと証明する証拠がない状況において、南京市以外の地区で支店など出先機関を大量に開設し、フランチャイズを発展させ、「呉良材」の文字を含む企業名称の使用を許諾するなどの行為は、商標権侵害および不正競争を構成するものである。よって、南京呉良材およびその支店などフランチャイズ店の南京市以外の地区における「呉良材」の文字を含む企業名称の登録・使用の停止、経済損失260万元の賠償、および影響の除去を判決した。一審判決後、南京呉良材は上訴したが、二審法院は、上訴を棄却し、原判決を維持する判決を下した。

  典型的意義:

  歴史的な原因により、中国では少なくない数の老舗ブランドが異なる地区の異なる事業者にそれぞれ企業名称や登録商標として使用され、法律上の企業名称権と商標権の衝突のみならず、市場における事業者と関連商品・サービスの混同も生じさせた。本件の2つの審級の法院が準拠した「歴史尊重、混同禁止、誠実信用、利益衡量」という老舗の知的財産権にかかわる司法保護理念は、歴史的に形成された事実を尊重し、被告に相応の発展の余地を残しつつも、商標法の規定に基づいて登録商標の専用権を合理的に保護し、混同を生じさせる使用を禁止している。これは、事業者が順守すべき市場競争における信義誠実の原則を充分に反映しつつ、原被告および消費者の利益も合理的に衡量したものとなっている。本件の典型的意義は、司法によって老舗ブランドの継承と発展を保障し、老舗ブランドの権利の境界線を合理的に画定する上で、法的な思考を提示し、中国の「老字号」(老舗ブランド)の権利に関する紛争事件の妥当な処理について司法上の経験を提供した点にある。

 
 
集佳の最新動向

 
集佳弁護士が韓国知的財産協議会年度会議の招聘を受け、主題講演を行う

   近頃、韓国知的財産協議会(Korea Intellectual Property Association)(KINPA)年度会議が韓国三陟(サムチョク)市にて順調に開催され、招聘を受けた集佳の李徳山副所長、パートナー弁護士の鄭毅氏、李兵氏が出席した。

   今回の会議は、韓国の知的財産権界から幅広く注目を集め、韓国の半数以上の有名企業から出席者が集まり、集佳は、招待された中国の事務所として会議に参加した。会議は、半ば懇親会のような方式で進められ、韓国の多数の有名企業代表が一堂に会し、知的財産権の動向が語られ、組織の整備について意見が交わされ、会議は和やかな雰囲気で進行した。

▲会議の様子

   会議では、集佳のパートナーである李兵弁護士が現在のホットトピックに焦点を当て、「OEM加工での使用行為は商標権侵害を構成するか」とのテーマで講演を行い、企業代表らと意見交換を行った。会議に出席した企業代表からは大きな反響が寄せられ、各自がテーマに関するさまざまな意見を表明した。会議後も少なからぬ企業法務担当者が集佳の弁護士と意見を交換し、今回のテーマに関する現在の中国での法律実務と韓国企業が直面する法律上の問題について語り合った。

   韓国知的財産協議会(KINPA)は、韓国の非政府の協力組織であり、その主要目的は韓国の営利企業の知的財産権利用に関する専門的知識と経験の紹介、協力活動を通じて、知的財産権関連分野の競争力を高めるという共通目標を実現することにあり、現在、同協議会には計172社の企業会員が参加している。

 
集佳とラフィットが上海知的財産権法院・自由貿易区関連知的財産権関連の裁判白書発表会および司法保護の座談会に出席

  4月20日、上海知識産権法院と中国(上海)自由貿易試験区管理委員会は、自由貿易区にかかわる知的財産権事件の裁判白書発表会および司法保護の座談会を共同で開催した。上海市高級人民法院の張斌副院長、浦東新区の王靖副区長、上海知識産権法院の王秋良院長、浦東新区知識産権局の林本初局長が出席し、集佳からは侯玉静弁護士、黄鶯弁護士がラフィット・ロートシルト・グループのCEOであるプラッツ(Prats)氏、中国市場部マネージャーの宋萍氏に同伴して参加し、有名企業10数社の代表、主要メディアと共に、白書の発表に立会うとともに、招聘を受けて司法保護の座談会に出席した。

  第18回目の「世界知的所有権の日」を前にして、集佳が代理した「シャトー・ラフィット・ロートシルトと上海保醇実業発展有限公司、保正(上海)供応鏈管理股份有限公司との商標権侵害に関する紛争事件」は、司法実務において広く参考となる意義を有し、大きな社会的影響をもたらしたことに鑑み、「最高人民法院2017年の典型知的財産権事例50件」および「2017年上海法院十大知的財産権判例」に選ばれており、そこで今回の司法保護の座談会の席上では、ラフィット代表が本件の公正かつ迅速な裁判について上海知的財産権法院、政府、および臨席の各級指導者に感謝の意を表するとともに、中国におけるラフィットLAFITE商標の権利保護活動のプロセスと成果について感想を述べ、中国市場において各級政府、法院との協力を強化し、知的財産権の保護を向上するという胸の内を語った。

▲上海知識産権法院王秋良院長と集佳弁護士、ラフィット代表の熱心な交流が行われた

  企業代表として、プラッツ氏は他の有名企業10数社の各経営幹部らとも知的財産権の管理、保護および訴訟における所感を共有し、法院による知的財産権の司法保護のさらなる強化のために、企業のイノベーション・起業における知的財産権の創造、保護、運用上の難点や課題の解決について第一線からの声を伝えた。

  閉会後、ラフィット・ロートシルト・グループの招きに応じて、李永波弁護士、侯玉静弁護士、黄鶯弁護士、秦麗麗弁護士がラフィットの新しい上海オフィスを訪問し、ロスチャイルド家構成員、ラフィット・ロートシルト・グループCEO、グローバル市場ディレクター、中国市場マネージャーと面会し、集佳弁護士からクライアント(ラフィット)に対して近年におけるラフィットの一連の商標にかかわる権利確認・許諾・保護案件の成果について説明し、商標保護方面での提言を行った。ラフィット側からは、同社知的財産権の保護の成果は明らかであり、同社知的財産権戦略に向けた集佳の多年にわたる積極的な努力に感謝するとともに、集佳が今回の司法保護の座談会への参加を手配し、知的財産権法院・政府など主管機関との対面交流の機会を提供したことに対して感謝する旨が伝えられた。双方は今後とも心の通じ合った協力関係の強化を図り、ラフィット知的財産権の保護に向けて新たな局面を共に切り拓いていきたいと表明した。